建設業における2024年「働き方改革」の問題点

建設業における2024年「働き方改革」の問題点について、建設業許可専門の行政書士がわかりやすく解説。

働き方改革とは

 2024年4月からいわゆる「働き方改革」と呼ばれる「時間外労働規制」をする法律が施行されます。時間外労働について原則「1ヶ月で45時間、1年で360時間以内」が限度となります。(労務関係については「弁護士」「社会保険労務士」が専門家です。私の発言は一意見として受け取っていただけると幸いです。)

建設業での業務実態

 私が現場に出ていたころは週6勤務で1日12時間労働、サビ残は当たり前でした。孫請けの会社に勤めていた平社員である私の率直な感想は

「仕方ないよね。」

でした。「え?法律に関わる人間がそんなこと言っていいの?」と突っ込まれそうですが、もう10年以上前の話ですし現実的な肌感覚はそんなものでした。

 理由は明白で「現場作業以外に時間がかかる」ためです。電話工事の会社に勤めていた私の1日は「元請会社に出勤→準備→現場へ移動→現場作業→元請会社へ帰社→片付け→日報」という流れでした。工事内容にもよりますが、1日に何現場も回るのが通常で、そのたびに移動時間がかかりました。この中でお金が発生するのは「現場作業」だけです。元請会社から下請け会社から支払われるお金が「日当」(人工出しの契約は法律違反になることがあります。)だとしても、基本的にお金を生む作業は「現場作業」だけです。それ以外の時間は金銭が発生しません。そのため「現場作業8時間+α」の時間が必要になってしまうのです。

 では元請会社が改善すればいいのでは?という疑問がありますが、元請会社は発注会社の要望を聞き入れなければなりません。そして発注会社の注文はお客様の要望を元に決まります。昨今はミスを許さない風潮が強く、発注会社はミスを防ぐために様々な対策を元請会社へ指示します。例えば私のいた業界では、ミスが無いかチェックするために現場で写真を撮って元請会社のチェックをする課へ送信する、という工程が増えたりしました。(現在はこの工程を無くしている現場も多いと聞きました。)元の料金設定に変更があるわけではないので、結果として発注会社も元請会社も下請け会社も負担は増えるけれどもお金は増えないという状態に陥ります。

 そのため「残業代は欲しいけど、会社にお金が入ってこないから仕方がないよね。」というのが当時の私の感想でした。

建設業における「働き方改革」の問題点

 上述したような問題を解決するためには、誰かが強制的に介入する必要があり、法律をもって「働き方改革」を進めることには、個人的にはおおむね賛成です。

 ただ、法律に合わせた準備ができていない会社や現場も多く様々な問題も指摘されています。この中で個人的に一番問題だと感じているのが「下請会社にしわ寄せがいってしまい会社が耐えられるのか」という点です。

 働き方改革によって労働時間が制限されると一時的に生産力が低下します。例えば100軒の家を工期1年間で施工している場合に生産力が50%にダウンするときの解決方法は

①50軒に減らす。

②人員を増やす。

の二択になるかと思います。発注会社に入るお金が増えない限り、かけるお金は増やせないので、①の選択をする会社がほとんどかと思います。こうなると、当然ながら利益は減りますよね。

 この時発注会社は、お客様からもらえる金額も減りますが元請会社へ支払う金額が減ります。元請会社も発注会社からもらえる金額が減りますが、下請会社へ支払う金額が減ります。では下請会社はどうでしょうか?元請会社からもらえる金額は減ります。しかし、自社の社員の給料や法人としての支払い等は減りません。というか減らせません。

 働き方改革に建設業界が対応して以前と同じ生産性を取り戻すことも考えられますが、果たして下請け会社はそれまで持つのでしょうか?

解決策

 「じゃあ潰れろというのか!!」という声が聞こえてきそうですが、解決策としての提案があります。

 それは

「元請会社を増やすこと」

です。

 つまりは一つの元請会社へ依存しすぎないということです。以前は人と人とのつながりが強固で、義理人情や固い絆で仕事をしていました。しかし、現代では不景気で業務量も不安定、ネットの発達によって働き手を探すことも容易になっています。「昔からこんなに身を粉にして元請会社のためにやってきたのに、こんな扱いか。」と嘆いている方も多いのではないのでしょうか。

 ただし、これはお互い様です。下請会社も仕事を探すのが以前に比べたら容易になってきました。加えて業務量の低下には不景気や働き方改革の影響もあり、元請会社に全て責任があるとは言い切れません。また、一つの元請会社へ依存せず、業務がある場所で仕事ができる方が会社としても地盤を固めることができます。

 具体的な方法としては、建設業関係や自社に関係が深い業界の団体へ所属すること、下請会社同士での繋がりを作ること、建設業のマッチングサイトに登録することなどがあげられます。

 そして最後に行政書士としておすすめしたいのが

「建設業許可の取得」

です。

 元請会社も、何か仕事を依頼したい時に「どのような経験があるどのような会社か」が見えない会社へはなかなか依頼しづらいものです。その時に「建設業許可」を取得していると建設業の会社として一定の信頼を得ることが可能です。新たな業務開拓のためにも、まだ取得されていない方は「建設業許可の取得」を是非検討してみてください。

 大沢明久行政書士事務所では、神奈川県・東京都・埼玉県・千葉県の一部の方を対象に「建設業許可」に関する申請・届出の代行を承っております。「新規申請」「更新」「変更」「決算変更」「電気工事業の登録」等、下記フォームからまずはお気軽にご相談ください。

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